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マルジャン・サトラピ『ペルセポリス』Ⅰ、Ⅱ 

ペルセポリスI イランの少女マルジ ペルセポリスI イランの少女マルジ
マルジャン・サトラピ (2005/06/13)
バジリコ
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ペルセポリスII マルジ、故郷に帰る ペルセポリスII マルジ、故郷に帰る
マルジャン・サトラピ (2005/06/13)
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persepolis1.jpg 革命と対イラク戦争の激動期を祖国イランで過ごした女性の自伝的漫画。原作は Marjane Satrapi『Persépolis』全4巻で、L'Association(アソシアシオン)から2000年に出版されています。素朴な絵にもかかわらず、滅法面白い! 白黒で、登場人物もリアルな描き方をしていないので、日本人には馴染みやすいかもしれません。戦争というテーマを扱いつつ、それが人間の生き方に対する問いにまで発展している点で、アート・スピーゲルマンの『マウス』(晶文社)を連想させます。第1巻は主人公のマルジが戦時下のイランを離れ、一人オーストリアに旅立つまで。ラストが泣けます。で、戦禍を避け、イランを出国したマルジのオーストリアでの生活とイランへの帰国、そしてその後の生活を描くのが第2巻。青春マンガ的な味わいが素晴らしい。名前のごとくヨーロッパにおいても、イランにおいても周縁的(マルジナル)な生活を送りつつ、徐々に自分の居場所を発見していくマルジの姿が感動的! 同じ作家の『刺繍』が明石書店から翻訳出版されています。あとはぜひ『Poulet aux prunes(鶏のプラム煮)』の翻訳を!

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マルジャン・サトラピ『刺繍』 

刺繍―イラン女性が語る恋愛と結婚 刺繍―イラン女性が語る恋愛と結婚
大野 朗子、マルジャン・サトラピ 他 (2006/07)
明石書店
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broderies2.jpg 原題は Marjane Satrapi『Broderies』で、2003年に L'Association(アソシアシオン)から出ています。サトラピと言えば、既に邦訳のある『ペルセポリス』(全2巻、バジリコ、2005年刊)の作者であり、それに続いて今回こうやって『刺繍』が日本語になったのは、翻訳出版がある程度成功しているということでしょうか。BDファンとしてはうれしいところです。
 
broderies3.jpg 物語の骨子は、ある午後、イランのサトラピ家に集まった様々な世代のご婦人方が女ばかりであけすけなおしゃべりに興ずるといったものです。話題にあがるのは多くの場合恋愛で、話者たち自身の体験や人づてに聞いた話がいかにも楽しげに語られます。さすがは『千一夜物語』の国ということで、そのおしゃべりの際限ないこと! ちょっとでも横やりが入ると、「話の腰を折らないでちょうだい」という具合です。『ペルセポリス』もそうでしたが、一見過度の抑圧を被っていそうに見えるイランの女性たちの逞しさとかしたたかさみたいなものが垣間見えるようで、非常に興味深い。面白いのは『刺繍』というタイトルが与えられているにもかかわらず、刺繍が行なわれているわけでも、話題に挙がっているわけでもないというところで、この言葉は比喩として用いられているようです。一つには女性たちのお茶を囲んだ長時間にわたる言葉のやりとりが、生地をうねうねと行き来する糸のようであるということなのでしょう。そして、もう一つ別に意味があるんですが、これは読んでのお楽しみということで…

 一応BDと言っていいと思いますが、絵は全て白黒で描かれていて、コマ割は一切ありません。時には1ページに1つの絵しか描かれないということもあります。エッセイ・マンガ的な趣でしょうか。あと、ページ番号が振られていませんね。特別不便ということはありませんが、不思議な感じはします。明石書店はギィ・ドゥリールの『平壌』に続いて2作目のBD出版ですが、あまりよく知られていない地域の風俗を伝える作品が続いているところが少し気になります。解説もサトラピのBD史における位置づけとかそんな感じではなく、イランの日常生活を伝える好著として評価するというスタンスだし… こういう作品しか出さんつもりか…? いやいや、そんなことはないと思いますが(笑)、せっかくBDを出してくれているので、これからも頑張っていただきたいと思います。あとは『Poulet aux prunes(鶏のプラム煮)』もこの際訳してほしいなーみたいな… ちなみに『刺繍』は朝日新聞に書評が載りました。
http://book.asahi.com/review/TKY200609050261.html

アレックス・バルビエ『市長への手紙』 

20060913061601.jpg アレックス・バルビエ『市長への手紙』(ハセガワ タカコ訳、講談社、1998年刊)という邦訳されたBDが存在します。仏語版は Alex Barbier『Lettres au maire de V.』Freon Eds(1998)、2巻本だと思っていたら、2006年の5月に第3巻というのも出ているようです。「そのあまりにも過激な内容のためにフランス漫画界から抹殺された禁断の漫画家」ということで非常に期待していたんですが、肩書きに恥じない素晴らしいBD作家です。漫画というよりはほとんど絵画ですね。絵の連続とナレーションで物語を作っています。

20060913061810.jpg 物語の構成は8ページほどの短い話が全部で11編、姿が見えない「市長」なる人物に宛てた書簡という形式を取っていて、全て町(v町?)で蛮行を働いている狼男を問題にしています。差し出し人は複数いて、狼男の凶行を覗き見た市民が投書をしたり、あるいは狼男本人が市長に宛てて挑発的な手紙を書いたり… その内、それぞれの手紙が言っていることが相互に矛盾し始め、誰が狼男なのかがわからなくなって… という感じです。絵は水彩で描かれているんでしょうか? 滲んだ感じが何やら不吉です。
 残念ながら、90年代に翻訳出版された他のBDと同じく、町の本屋で普通に購入することはできません。たまにアマゾンのマーケットプライスに出品されていたりします。

* 画像は仏語版です。


Bilal(ビラル) & Christin(クリスタン)『Fins de Siècle(世紀末)』 

20060913053929.jpgえ! ビラルとクリスタンのコンビに新刊が! と思った方、ごめんなさい(笑)。新刊ではありません… ビラルのキャリアの割と初期に描かれた2つの作品『Les Phalanges de l’ordre noir(闇のファランヘ党員たち)』(1979年)と『Partie de chasse(狩猟隊)』(1983年)がこの8月に装いも新たに『Fins de Siècle(世紀末)』という合本として casterman(カステルマン)社から出版されました。日本では『モンスターの眠り』と「ニコポル3部作」の翻訳、および『ゴッド・ディーヴァ』、『バンカーパレス・ホテル』といった映画で知られているビラルですが、今回再刊されるどちらの作品も70、80年代の歴史的、政治的状況を描いた傑作として知られています。この機会に読んでみては? かく言う僕もまだ読んでいません…

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『Corto Maltese(コルト・マルテーゼ)』ポケット版 

20060913042204.jpgフランス語圏の作家ではありませんが、「80年代に世界で最も読まれた漫画」(『l'ABCdaire de la Bande dessinée(漫画のABC)』Flammarion, 2002)、Hugo Pratt(ユーゴー・プラット)の『Corto Maltese en poche(コルト・マルテーゼ‐ポケット版)』が現在 casterman(カステルマン)社から刊行中です。フランスでも非常に知名度が高いので、BDと言ってしまっても全く問題ないでしょう。そういえば『Les Aventures de Tintin(タンタンの冒険)』を描いた Hergé(エルジェ)はベルギー人ですし、フランス‐ベルギー‐イタリア‐スペイン辺りで描かれた漫画の総称として BD という言葉を使って全く問題ないと思います。

20060913042215.jpgさて、現在のところ出版されているのが、第1巻『La jeunesse(少年時代)』、第2巻『La ballade de la mer salée(海のバラード)』、第3巻『Le secret de Tristan Bantam(トリスタン・バンタムの秘密)』の3点で、2巻だけやや高めで約10 € 、あとは5 € 前後の値段です。大きさは14 cm x 21 cm、やはり通常のアルバム版の半分くらいです。で、9月22日にあと3巻加わるようで、第4巻『Rendez-vous à Bahia(バイーアでの出会い)』、第5巻『Samba avec Tir Fixe(ティル・フィックスとサンバを)』、第6巻『L'Aiale du Brésil(ブラジルのアイアール)』が予定されています。僕は未読なんですが、いい機会なので、読んでみたいですね。


* 画像はポケット版ではなくアルバム版です。

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